ロスト達との交流から数日後……一日の活動を終えたコール達は、就寝の時間になったので、寝る準備をしていた。
「よーし、寝るかー」
背伸びをしながら、あくびまじりにフィックスは言った。
「はい」
「はーい☆」
コールとブラックも自分のベッドに入り、フィックスがランプのロウソクを消そうとした時、急に雨が降ってきた。
「お? 雨か……」
次の瞬間、激しい音と共に、雷が落ちた。
「おわ!」
「急に天気が……」
「耳が痛いねー☆」
フィックスはクリアーの事を思い出し、ロウソクを消すのをやめた。
「てか、クリアー雷苦手だけど、これ眠れんのか??」
「どうなんでしょうか……」
「苦手なら眠れないんじゃないの??」
ブラックの一言に、フィックスはクリアーの様子が気になった。
「…………俺、ちょっと見てくる」
「はい」
「あ、もし怖がってたらしばらく居るから、先寝てて」
「はい、おやすみなさい」
ランプを持って、フィックスが部屋を出ようとした時、ブラックは言った。
「棒兄ちゃん頑張ってねー☆」
振り返り、眉をひそめて、フィックスはブラックを見た。
「……寝かしつけをな……」
「にゃはは☆」
フィックスはそのまま、部屋から出て行った。
「ブラックさん……あんまりからかっちゃダメですよ。フィックスさん、クリアーの保護者なんですから」
真剣なまなざしのコールに、ブラックは思った。
(コールくんは、棒兄ちゃんが無自覚だけど、クリアーちゃんに気があるの、全く気付いてないからなー)
「はーい☆ ほどほどにするねー☆」
「ほどほど……」
やめるとは言わないブラックに少々呆れつつ、コールはベッドに入った。ブラックも、大した出来事は起こらないだろうと思い、先に寝る事にした。
隣室であるクリアーの部屋の前に着いたフィックスは、ドアをノックした。
「クリアー? 大丈夫かー?」
すると中から、妙な声が聞こえた。
「ふぃ……ふぃ……」
「ん? 鍵開いてる……入るぞ」
ドアを開けると、ベッドの上には、白いおばけのようなものが居た。
「うおっ!!」
よく見ると、シーツを被ったクリアーだったようで、フィックスを確認する為に顔を出し、涙目でこっちを見ている。
「ふぃっくす……」
「お前なにシーツおばけになってんだよ」
「だって……」
フィックスがクリアーの側まで行った時、また大きな雷が落ちた。
「わああ!」
クリアーはびっくりして、フィックスに飛びついた。
「ちょ!!」
「当たったら死ぬ!!」
「まず当たんねえよ……周りに高い木が山ほどあるから、そっちに落ちるって」
外は雷がピカピカと光り、ゴロゴロと音がしている。視覚と聴覚から恐怖を煽られ、クリアーは震えていた。
(ホントこども……)
フィックスはクリアーの頭を撫で、落ち着かせようとした。
「……ふぃっくす」
「あ?」
「今日……一緒に寝て!!」
「は!?」
突然の添い寝の申し出に、フィックスは赤面した。
「怖い!!」
「それはさすがに無理!! ホント勘弁してください!!」
「寝れないー!」
フィックスの服を強く掴み、クリアーは震えている。
「くっ……前みたいに落ち着くまで居るから……」
「うん……」
一緒のベッドでの添い寝は無理だが、寝るまで側に居る事で、フィックスはクリアーをなんとか寝かそうとした。しかし、そもそもフィックスも寝る時間だったので、数分後、意識が飛んでしまった。
「はっ! やべ! ちょっと寝てた!! クリアー?」
ベッドの横の椅子に座っていたフィックスだったが、顔を上げ、クリアーを見ると、すーすーと規則的な寝息を立てて寝ていた。
「良かった……眠れたじゃん……雷も止んで雨だけになってるし……じゃあ俺はこれで……」
クリアーの布団が乱れていたので、整えようと椅子から立ち上がり、手を伸ばした瞬間、その手をさっと掴まれてしまった。
「ん? 起きてんのか?」
相手に反応はないので、どうやら無意識に掴んだようだった。
「そういやコイツ……寝てる時に近くに居ると、掴むクセあったな……」
掴まれた手を離そうとするが、力が強く、外せない。
「え? えええ?? ちょ! クリアー! 手! 手離して??」
「うーん、フィックスー……」
「おいってば!」
クリアーは手を緩めることなく、すやすやと寝ている。
「っく……もー!!」
そしてそのまま、朝を迎えた。フィックスはクリアーが気になり、眠れずに一晩中横に居た。
「くそ……全然眠れなかった……」
そんなフィックスの事に気が付かず、ぐっすり眠っていたクリアーは、ようやく目を覚ました。
「あれ……」
「起きたか……」
「あ……手……ごめんフィックス!」
「いいけど……あとで昼寝はさせて……」
(あーもう……俺なんでこいつにこんな弱いかなあ……てか……クリアーもロストに対して、こんなだったのかも……)
ロストのクレアとの過去話で、ワガママ放題だったロストを、フィックスは思い出した。
「手のかかる奴が相手だと……こうなるのか……」
「へ?」
その頃ロストは、何かの気配を感じていた。スロウはそんなロストの様子に気が付き、声をかけた。
「どうしました? ……ロスト様」
「誰かが私の事を……悪く思っている気がする……」
「え?」
ロストは無駄に、感が良かった。そして、朝帰りしたフィックスは、ブラックにまた、散々茶化されるのだった。



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